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トンネル補修の線導水・面導水とは
はじめに
トンネル覆工面からの漏水は、歩行者や車両の通行を著しく妨げます。その対策の一つとして、
線導水・面導水
があります。これらの地表導管およびトラフは、漏出量が比較的少ない場合に使用され、漏出量の大小によって分類されます。寒冷地のつらら対策として断熱材を使用することも可能です。ただし、施工厚みが約4cmあるため、建築限界に余裕のあるトンネルに適しています。
トンネル補修の実態
トンネル補修での漏水防止対策は、トンネルごとに異なる覆工コンクリートの状態に注意が必要です。しかし、建設されたトンネルは、覆工の厚さやコンクリートの質が不均一なことが多く、ジャンカーやコールドジョイントなどのコンクリートの欠陥からの漏水により、広範囲に漏水が発生する可能性があります。この場合、線導水による漏水対策は不可能と判断し、面導水の覆工コンクリート面を覆う表面漏水対策を実施します。寒冷地では、線導水コンジットも凍結による脱落や破損の問題があり、同様の配慮が必要でした。しかし、寒冷地で発生した地表線管の脱落事故により、肉眼で見える線管の存在が認識されるようになりました。
補修工事を行う上で最も重要なのが、覆工コンクリート表面(コンクリート目地=ひび割れ、接合部など)に発生する線導水による漏水処理工法です。
線導水とは
アーチコンクリートと側壁コンクリートの間(水平目地)のトンネル内の漏水を、弾性材を用いてトンネル漏水対策として防止する工法です。導水(充填)材に独立発泡ゴムを使用し、フレームの伸縮に追従し、再漏れを解消します。
コンクリートの継ぎ目やひび割れからの漏水は、排水系統に導き処理し、水漏れによる路面凍結を防ぎます。コンクリート構造物の漏水処理や凍結防止に使用されます。
【ライン送水方法】接着剤、エポキシ樹脂プライマー、導水材(クロロプレンゴムなど)、表面処理材
機能や性能の確認チェック
・通過する車両の振動に耐えられるか?
「振動試験」において、その機能を十分に発揮することを確認します。
・背水圧に耐えられるか?
「独立発泡ゴム」を使用し、「エポキシ樹脂パテで表面を補強」することで背水圧に耐え、中央に突起を残すことで弾力性を確保します。
・落下するか?
「弾力性に優れた高品質ゴムシリーズ」を水中硬化型エポキシ樹脂接着剤で覆工コンクリートのカッター切断面に貼り付け、表面をエポキシ樹脂パテで覆い(突起を残す)、建物と一体化構造にします。
・寒冷地でも凍らないか?
導水ゴムの熱伝導率が小さいため、従来工法よりも凍結しにくいことが実証されました。しかし、末端の排水口が凍結し水道管が凍結して管路が閉塞した後、強い水圧が作用すると、接着の弱い部分が剥がれて水漏れを起こしたり、遊離石灰で管路が詰まったりします。
・建物のゲージに違反しないか?
躯体を削り取って躯体内に埋め込み、表面を面一に仕上げているため、建築限界を確保できます。
・クラックなどの曲がりへの対応力はあるか?
弾力性に優れた肉厚の弾性ゴムをフィラーとして使用しているため、曲線的な施工が可能です。(不良部品は修理が必要です)
・充填材が連続でどこでも自由に接続可能か?
3S工法でどの位置でも自由に接続できます。ゴム同士の接合部には剥離防止のため接着剤を塗布し、接合面にゴム突起が無い場合はゴム突起を貼り付けてこの面の伸縮圧力を吸収します。
・部分的な再建が可能か?
水路が目詰まり等で部分的に剥がれ、再び水漏れした場合は交換を余儀なくされます。周辺に問題がなければ、漏水箇所を交換する「部分工事」が可能です。
漏れる部分に合わせた金型サイズで施工可能です。
70、100、120、150の標準タイプ(標準品)があり、漏れ箇所の状況に合わせて使い分けることができます。既存の修理方法等があり、この範囲に収まらない場合は、規格外品(210型、250型)も使用可能です。
線導水の施工手順
①インキ・チッピング
継ぎ目や割れ目に印を付け、カッターを入れて所定の断面形状に削ります。
②導電材取付工事
打ち抜いたコンクリートの溝に接着剤を塗布し、ここに導水材を設置します。
③表面処理材塗布機
導水材施工後、プライマーを塗布し、レジン系仕上げ材で表面を整えます。
④取り付け完了
線導水の課題
線導水の課題としてラインコンジットのコンジット閉塞があります。
遊離石灰が多量に発生するトンネルでは、地表導水による漏水対策を行うと裏側に遊離石灰が多量に付着(堆積)しますので、アーチ上部を覆う際は過負荷が必要とされています。また、地表管路の覆工コンクリート表面の劣化は確認できないため、剥離事故が発生した場合にのみ危険性が分かります。
面導水とは
面導水とはトンネル覆工の表面に発生するひび割れや目地からの漏水を特殊な部材で集め、路面や歩道の排水系統に導く工法です。
漏水防止板は軽量で着脱が容易なため、工期を短縮できます。
断熱材の熱伝導率が低く、水に触れる裏面はビニールシートで覆われているため、設計時の断熱性能を半永久的に維持できます。
表皮素材は耐久性が高く、特に塩化カルシウムによる腐食に強い素材です。色が白なので完成後の見栄えも抜群です。
各トンネルの気象条件などの環境に合わせて、必要な厚さに加工できるので経済的です。
面導水の施工手順
①インク皿
設置場所に印をつけます。 (外側に付いているので欠けません。)
②導電材取付工事
ステンレス鋼アンカーを配置しながら、導水材を取り付けます。
③設置完了
面導水の課題
遊離石灰の多いトンネルでは、導水管の末端(排水口)が詰まることがあります。その場合、フレームと導水材の接着面が剥がれ、機能を失う恐れがあります。このような現象は、流れの断面積やサイズを大きくすることで、ある程度抑えることができます。この場合、3S工法では、導水管のVカット部分をUカットや箱型にカットします。標準の深さは30mmですが、これよりも広い断面が必要な場合は、深さとサイズを大きくするように変更します。
まとめ
トンネル内の漏水対策として、
線導水・面導水
を紹介しました。これらの対策は漏出量が比較的少ない場合に使用可能であり、漏水量が多すぎると使用できません。また、施工する際の厚みが約4cmと厚く、建築限界に余裕のあるトンネルでないと施工できないことも理解しておく必要があります。漏水量、トンネルの広さなどから判断して適切な漏水対策を行うことが大切です。