表面被覆工法についての解説

コンクリート構造物の補修・補強は、構造物の種類や工法を用いる目的、施工環境によって様々です。

この記事では、表面被覆工法について工法の特徴や、使用する材料、施工手順、施工管理項目、施工時の注意点について紹介するとともに、詳細について解説していきます。

表面被覆工法とは

表面被覆工法は、コンクリート表面から内部に侵入してくる水分、酸素、塩分などの劣化因子からコンクリートを被覆することで遮断し、コンクリートの剥落を抑える工法です。

また、劣化因子の侵入を遮断するだけではなく、塩害や中性化、アルカリシリカ反応(ASR)など劣化現象の防止にも適しています。

特に、コンクリートの中性化を抑制するのには表面被覆工法が最適です。

二酸化炭素の影響でコンクリートのアルカリ性が低下することを中性化と呼びますが、中性化はコンクリートの内部に向かって進行し、鉄筋にまで達すると腐食してしまいます。そのような中性化による腐食の対策として、表面被覆工法は効果を発揮します。

表面被覆工法の特徴

表面被覆工法は、コンクリートの表面を改装するだけではなく、内部からコンクリート躯体の改修や改善を行います。

劣化したコンクリートの躯体をアルカリ性にすることでコンクリートの表面を強化し、コンクリートを本来の状態に回復させてくれます。

特殊な材料を用いてコンクリートの表面を覆うことで、水や炭酸ガスの侵入を防ぎます。

施工後もコンクリートが中性化することを防ぎ、コンクリート内部の鉄筋の腐食を抑制してくれます。

表面被覆工法に使用する材料

表面被覆工法に用いられる材料は、プライマーや不陸調整、主材、仕上げ材などそれぞれの機能に応じて使い分けられています。

大きく分けると有機系と無機系に分類されるため、各材料の特徴について解説していきます。

有機系被覆材

有機系被覆材には、エポキシ樹脂やポリウレタン樹脂などが用いられ、その種類によって性能や効果が異なります。

形成される被膜が緻密であるため、優れた防水性と塩害や中性化を抑制してくれる役割があります。

また、薬品にも強い材料で、下水道施設などのライニングにも使用される場合が多いです。

無機系被覆材

無機系被覆材は、太陽光や雨など自然がもたらす要因からの耐久性に強い表面保護材料です。

アクリル系、ウレタン系、シリコーン系、フッ素系などの樹脂系、またはポリマーセメントといった材料が用いられています。

弾性が高いためコンクリートが水圧の変化や乾燥によって伸縮したり、振動による動きやひび割れにも追従してくれます。

また、コンクリートに有害な炭酸ガスや塩化物イオンの侵入を防ぐ効果も発揮します。

表面被覆工法の施工手順

表面被覆工法の施工手順について解説していきます。

足場設置

施工場所に足場を設置して既存コンクリートの劣化部分やコンクリートを保護している層を除去していきます。

下地処理

まずは目視や指で触ってコンクリートの表面に突起物がないかを確認します。

次にコンクリートの表面に付着している汚れや粉塵、脆弱になっている部分を除去します。

汚れを落とす時には高圧洗浄機を用い、コンクリートの表面に応じてディスクサンダーを用いて削り取るのが主流です。

プライマー塗布

プライマー塗布の前に、コンクリートの表面に大きな凹凸や膨らみがないかを確認します。

次にコンクリートと凹凸部分を埋める不陸調整用のパテ材、中塗り材の付着力を高めるためのプライマーを塗布します。

浸透性の高いプライマーを塗布することでコンクリートを保護する層を形成する役割も有ります。

主剤と硬化剤を計量し、規定の重量比通りにハンドミキサーなどで撹拌して使用します。

施工時は気象条件やプライマーの使用可能な時間や、塗り残しがないことを確認することが重要です。

下塗り(パテ塗布)

主にコンクリート表面の凹凸を平らにするため、パテ材をコテやハケなどを使って埋めていきます。

コンクリート表面の凹凸を埋めることを不陸調整といい、パテ材は表面にできた穴や気泡をすり込むように埋めるためにも用いられています。

こちらも施工時に気象条件やパテ材の使用可能時間を確認することが重要です。

中塗り(一層)

プライマーがしっかり乾燥したことを指で触って確認した後、コンクリートの劣化因子である塩分、水分、酸素、二酸化炭素などがコンクリート内部に侵入しないように中塗り材を塗布していきます。

中塗り材を塗布することで、コンクリート内部に侵入しようとする劣化因子を遮断します。

気象条件や塗料の使用可能時間を確認し、ムラや塗料が流れ出ないように塗り残しなく塗布していくことが重要です。

上塗り(一層)

中塗り材の塗装後にしっかりと乾燥したかを指で触って確認します。

中塗り材を塗布したことでできた塗装の膜を紫外線から保護するために、耐候性のある上塗り材を塗布します。

気象条件や塗料の使用可能時間を確認し、塗りムラや塗料が流れ出ないように塗り残しなく塗布していきます。

上塗りを塗布する理由は、塗膜の耐久性を確保するとともに、施工後も長期的に安定した性能を発揮できるようにするためです。

足場撤去

施工箇所を確認し、問題がなければ足場を撤去して完了です。

施工管理項目

表面被覆工法の施工管理項目を表形式でご紹介します。

 

工 程 管理項目 判定基準
作業環境 温度 5℃以上40℃以下
湿度 相対湿度85%以下
結露 ないこと
強くないこと
飛来してきた塩分 ないこと
粉塵など 多くないこと
下地処理 コンクリート表面の状態 目視で施工計画書にて規定された状態であることを確認する
素地調整 コンクリート素地の状態 有害な物質が付着してないこと
素地の荒さ 塗装に支障がないこと
塗 装 表面含水率 十分に乾燥していること
使用材料 施工計画書にて規定されている材料であること
材料の使用量・施工方法 施工計画書にて規定されている使用量・方法であること
塗装間隔 規定の範囲内であること
完 成 仕上がり状態 異常がないこと

(出典:日本道路協会「鋼道路橋防食便覧)

 

表面被覆工法の施工は、期待されている効果を発揮するため、使用材料や前処理方法、施工方法などの性能が満足に足りうるものでなければなりません。

また、材料や工法の特徴の留意事項を理解した上で適切に施工しましょう。

施工上の注意点

表面被覆工法の施工上の注意点について挙げていきます。

表面被覆材は、外気温やコンクリートの含水状態など、気象条件に影響を受けやすいため施工する時期や工期に十分に注意をして設定することが重要です。

施工時の外気温は5℃以上、コンクリートの表面含水率は8%以下が目安となります。

まとめ

コンクリートの中性化を抑制するためには表面被覆工法が効果的であることが実証されていますが、実際のところ普及率はまだ低いようです。

その理由は、中性化の発生を予測することが難しいことが挙げられます。

実際にコンクリートにひび割れが発生した時に表面被覆工法が検討されることが多いようです。

また、塩害の恐れがあるコンクリート構造物には表面被覆工法の採用が増えてきています。

塩害の及ぼす事例が多いことが採用される理由に挙げられており、中性化においては今後採用事例が増えていくことが予想されます。

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