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紫外線硬化型FRPシートの特徴と施工方法について

紫外線硬化型FRPシートは、横断歩道橋などのインフラや、マンション・住宅など幅広い分野で活用されている新しい補修材料です。
このページでは、紫外線硬化型FRPシートの特徴や施工方法についてご紹介していきます。
紫外線硬化型FRPシートとは
紫外線硬化型FRPシートについてご紹介します。
FRP(Fiber Reinforced Plastics)は、繊維強化プラスチックと言われるプラスチックにガラス繊維を混ぜた複合材料のことです。
紫外線硬化型FRPシートは、紫外線を浴びることで硬化するポリエステルやビニルエステルなどの樹脂とガラス繊維で構成されています。
各種樹脂は薄くて柔らかいため、ハサミやカッターで切断できたり、穴を開けたりなど色々な加工ができますが、単体では強度が弱いため構造部材には適していません。
しかし、弾性率が高いガラス繊維と混ぜ合わせることで、軽い上に強度が高い複合材料になります。
紫外線硬化型FRPシートの効果
紫外線硬化型FRPシートの効果は、シートに紫外線が当たり硬化することで発揮されます。
シートに含まれる樹脂が素材と強力に接着し、より強度を増していくからです。
紫外線硬化型FRPシートを施工することにより耐食性、耐衝撃性に優れた強靭な防食層を形成し、長期的な防錆効果が見込まれ、さらに品質の向上と工期短縮が図れるという効果があります。
フィルムを剥がして貼るだけという簡単な施工のため、特殊な道具もいらず作業者の経験の有無もあまり関係ありません。
FRPシートの用途
FRPは材質の特性上、錆び付くことがありません。
その特性が様々な分野で認められるようになり、自動車や航空機、鉄道などの外装や内装、発電所や工場、水泳プール、マンションや住宅など幅広く使用されています。
建設分野では、歩道橋などの基盤となっている金属部分の耐食性を高めるためにFRPシートを表面に加工するなど、高い安全性が求められる場所での補修材料として使われるようになりました。
さらに、橋梁の補修および防食対策、地覆補修工事、標識や照明柱の防食対策などに適用されています。
紫外線硬化型FRPシートの施工方法
次に紫外線効果型FRPシートを施工する方法について、順を追ってご紹介します。
作業前確認
作業箇所の点検を十分に行い、紫外線硬化型FRPシートの施工に適さない場合は工事監督者と協議した上で修正を行ってもらいます。
下地の状態が降雨などで濡れていないことを確認し、下地が濡れている場合は十分に乾燥させてから作業を行います。
事前処理
施工現場に合わせて足場を組み立て、養生を行います。養生や換気には十分な配慮が必要です。
電動ハツリ機などを使用して、踏み段部分の滑り止めやコンクリートを除去していきます。
下地処理
鋼板部に浮いているサビなどを落としたうえでケレン処理を行い、埃などを清掃します。
既存塗膜はシートの付着力に影響が出るため、予め除去しておきましょう。
鋼板部などの設置場所に、はけやローラーでプライマーを塗布し、次の工程に移る前にプライマーの硬化を確認することが重要です。
下地に凹凸や穴が開いている場合は、不陸調整を行います。
不陸調整剤と不陸調整剤用の硬化剤を混合して設置場所に塗布します。
紫外線硬化型FRPシートを貼り付ける
事前に貼り付ける場所のサイズを確認し、紫外線が当たらないように養生しておくことが重要です。
紫外線硬化型FRPシートの貼り付け方法には全面貼りと部分貼りがあり、現場の状況によってどちらにするか選択します。
蛍光灯や水銀灯の灯りでも硬化が促進されることがありますのでご注意ください。
フィルムを剥がして、紫外線硬化型FRPシートに空気が入らないようにして貼り付けます。
フィルムは一度に全部剥がさず、少しずつ剥がしながら貼り付けていきます。
紫外線硬化型FRPシートを硬化させる
直射日光が当たらない場所においては、紫外線ランプや紫外線LED照射器を使用して、紫外線硬化型FRPシートを硬化させていきます。
FRPが硬化する時間は、直射日光下では1時間以内、紫外線照射器を使用する場合は使用する紫外線照射器の性能によって異なります。
1回の硬化でのシートの合計の厚みは3mm以下とし、3mmを超えて積層したい場合には、1回目の硬化後に再度硬化の手順に従って積層することになります。
しっかりとシートと端部処理剤が硬化しましょう。
端部処理
紫外線硬化型FRPシートの端部を端部処理剤を用いて雨仕舞いしていきます。
保護塗料の塗布
紫外線硬化型FRPシートは紫外線により効果しますが、硬化後は紫外線によって劣化するため、シートを保護する塗料を塗布していきます。
塗料は必ず指定されたものを使用しましょう。
完成
全ての工程を終えて、足場や養生を撤去したら完成です。
紫外線硬化型FRPシートの施工費用
ポリエステル樹脂製FRPシートの施工単価については、1か所あたりの施工サイズによって3つの区分に分かれます。
- 区分A 0.01㎡以上0.07㎡未満 74,600円~
- 区分B 0.07㎡以上0.15㎡未満 118,700円~
- 区分C 0.15㎡以上 189,900円~
更に紫外線照射の必要の有無、高所作業車の使用の有無、作業時間制限の有無の条件等によっても変動します。
詳細は土木コスト情報の「紫外線硬化型FRPシート設置工(ポリエステル樹脂)」にて確認できます。
※各種施工単価は奈良県の2024年度単価
※ビニルエステル樹脂製FRPシートの施工単価についてはメーカー見積もりとなります。
紫外線硬化型FRPシートの主要製品3点
紫外線硬化型FRPシートの主要製品3点をご紹介します。
紫外線硬化型FRPシート「ウルトラパッチ」
メーカー:阿南電機(株)
ポリエステルレジンとグラスファイバーを一体化し、フィルムでラミネートした紫外線効果型FRPシートです。
紫外線硬化型FRPシートの先駆けで公共事業において20年以上の実績があります。
土木コスト情報による清算に対応しています。
光硬化型FRPシート「ショウゼットVE-1000S」
メーカー:昭和電工建材(株)
FRPを半硬化状態にしたフレキシブルなシートに太陽光やランプなどの光を照射して、完全硬化状態のFRP防食被覆を形成する工法です。
e-シートクイック
メーカー:サンコーテクノ(株)
低臭気で環境に対応した紫外線で硬化するFRPシートです。
特殊な樹脂シートで補修、補強防水、防食などの様々な分野で使用されています。
まとめ
これまで紫外線硬化型FRPシートについてご紹介してきました。
紫外線硬化型FRPシートは、従来の鉄板溶接に成り代わる新技術として、横断歩道橋などの補修に使用されています。
今後も、さらに改良を加えた製品がNETIS(新技術情報提供システム)に登録され、新しい補修材料として日本全国の横断歩道橋の補修工事などで採用されていくことでしょう。