連続繊維シートによる橋梁補修について解説

連続繊維シート工法は、コンクリート構造物における梁、柱、床版のFRP補強で鋼板補強と同等以上の強度を発揮する画期的な工法です。

橋梁補修にも用いられている連続繊維シート工法について、工法の特徴や施工手順、品質管理方法などを解説していきます。

連続繊維シート工法とは

連続繊維シート工法は、連続繊維シートをコンクリート床版の下面、または橋脚などにエポキシ樹脂の接着剤で貼り付けて補強する工法です。

連続シートには炭素繊維、アラミド繊維があり、これらの連続繊維をシート状にして貼り付けます。

連続繊維シートは、床版や橋桁の荷重増加や劣化による耐荷重の低下に対して補強することによって、橋の長寿命化の向上、ひび割れ進行を抑制するために使われています。

また、橋脚変形性能に対して向上させることや、引張鉄筋を増設した時と同様な働きが期待できます。

連続繊維シート工法の特徴

連続繊維シート工法には、次のようなメリットがあります。

連続繊維シート工法のメリット

施工時は手作業だけで行われ、重機を使用しません。

コンクリート構造物の複雑な形状にも容易に対応できます。

溶接をする必要がないため、溶接工などの専門的な作業員が不要です。

鉄筋を使用しないので防錆対策が不要であり、接着剤を充填する必要もなく高い耐久性が期待できます。

連続繊維シート工法の用途

1.コンクリート構造物のFRPによる補強

2.塩害の被害を受けたコンクリート構造物や桟橋、河川構造物の保護補強

3.建築構造物の柱・壁・スラブの補強

4.コンクリート構造物のひび割れ・剥落対策

連続繊維シートの特徴

連続繊維シートは、基本的に炭素繊維シートとアラミド繊維シートの2種類があります。

それぞれのシートには次のような特徴があります。

曲がりに対する耐久力を高め、床版の疲労寿命を向上させ、変形の性能の向上は耐震補強に効果を発揮し、ひび割れの抑制にも適しています。

炭素繊維シートの特徴

炭素繊維シートはPC鋼材以上の引張強度を有しており、比重は鋼材の5分の1程度と軽いです。

変形のしにくさである弾性係数は鋼材の1〜3倍と高く、耐久性に優れており腐食の心配がありません。

アラミド繊維シートの特徴

アラミド繊維シートは、軽量であり高強度で施工が簡便に行えます。

破断による歪みが大きいため、繊維が破断しにくいこともメリットです。

地震波などの衝撃に強く、電気絶縁性があるため通電トラブルが生じることがありません。

連続繊維シート工法の施工手順

連続繊維シート工法の施工手順について解説していきます。

連続繊維シートを必要な分だけ繰り返し貼り付けることで、設計で要求されている耐震補強性能を確保します。

1.足場設置

2.下地処理

3.プライマー塗布

4.不陸調整

5.含浸接着剤下塗り

6.連続繊維シート貼付け

7.含浸接着剤上塗り

8.表面仕上げ

足場設置

施工場所において足場を設置します。

橋脚の上部での施工は、足場の設置によって施工不良の低下を防ぐことができ、作業を安全に行うことが必要です。

下地処理

コンクリート表面の付着物、脆弱な部分、凸部などをブラスト機やディスクサンダーで除去します。

プライマーを下塗りしやすくするため、塗装面を平らにしておきます。

プライマー塗布

墨出し完了後にマスキングテープを貼り、プライマーを塗布する部分と塗布しない部分を区分けしてから、マスキングテープで区分けした内部にプライマーをローラーで塗布していきます。

硬化不良の原因となるため、気温5℃以下、湿度85%以上または雨天時には塗布作業は行いません。

海岸近辺での施工は、塩害対策のため養生シートを用いて飛来してくる塩分の影響を防ぎます。

不陸調整

コンクリートの表面にある気泡を、パテ材を使用して接着面が平らになるように仕上げていきます。

コンクリートの表面に気泡があると、連続繊維シートを接着しても接着面が浮き上がってしまうため施工不良となるので注意が必要です。

接着面の広範囲にジャンカや気泡がある場合は、全面的にパテ材を塗布します。

含浸接着剤の下塗り

連続繊維シートに含浸性の高い樹脂接着剤をローラーで塗布していきます。

格子状に含浸接着剤を塗布する場合は、墨出しとマスキングテープを貼る工程分が全面的に貼る場合より多く、その分手間がかかります。

含浸接着剤の塗布は何回も繰り返すため、必要に応じて全面塗装の方が手間が省ける分採用されることが多いです。

連続繊維シート貼付け

連続繊維シートを格子状または全面的に貼り付けます。

補強効果を高めるなら格子状に貼り付けることで十分に効果を発揮しますが、経年変化が大きい場合には全面的に連続繊維シートを貼り付けて補強効果を高めるなど、施工状況によって貼り付ける方法を決めることが重要です。

シート内部に気泡が入らないように脱泡ローラーを用いて気泡を除去します。

連続繊維シートを必要回数だけ繰り返し貼付することにより設計で要求される耐震補強性能を確保します。

含浸接着剤の上塗り

連続繊維シート貼付け後、含浸性の高い樹脂接着剤をローラーで塗布していきます。

炭素繊維の積層分繰り返して塗布することで、十分に樹脂を含浸した連続繊維シートの引張に対する特性は、鋼板や鉄筋に比べ6倍〜10倍の強度を有します。

連続繊維シートと含浸樹脂接着剤の組み合わせは、基本的に3種類あります。

1.炭素繊維+エポキシ樹脂

2.炭素繊維+メタクリル樹脂

3.アラミド繊維+エポキシ樹脂

連続繊維シートの貼付け後に保護塗装を行う場合は、水分計で乾燥状態を確認して塗装を行います。

表面仕上げ

最後に必要に応じて保護塗装を行います。

表面仕上げは、連続繊維シートを紫外線や大気汚染から守る効果と美観の向上のために行うことが多いです。

連続繊維シートの品質確認方法

施工現場において、連続繊維シートとコンクリートの接着試験を行い連続繊維シートの品質を確認します。

確認方法は次の2つの試験によって行われます。

連続繊維シート接着試験

施工現場において別途試験用版を作成し、連続繊維シートとコンクリートの接着試験を行います。

試験終了後に連続繊維シートの層間で剥離が生じていないことが合格の基準です。

これは、連続繊維補シートとコンクリートとの接着面で剥離しないこと、すなわち下地コンクリートで引き剥がれることを確認することになります。

連続繊維シート貼付け確認試験

連続繊維シートを貼り付けた後、目視によってシートの膨らみや浮きを確認します。

さらに、ハンマーで打撃して打撃音が清音か濁音のどちらの音かで判断することも可能です。

連続繊維シートの腫れや浮きは、直径30mm以上なければ合格です。

直径10mm以上30mm未満の腫れや浮きが、1㎡あたり10箇所以上あった場合は不合格です。

腫れや浮きがあった場合には樹脂接着剤を注入して補修します。

おわりに

連続繊維シートは、鋼材よりも軽い上に強度が高いため、さまざまなコンクリート構造物の補強に使われています。

特に耐震補強においては、メリットの多い連続繊維シートが主流になってきました。

今後も各社の開発も強化され、新しい工法が生み出されることでしょう。

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