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コンクリートアンカー工について解説
この記事では、コンクリートアンカー工について解説します。
コンクリートアンカーの特徴や種類、施工手順や施工時の注意点について解説していきますので、参考にしていただけると幸いです。
コンクリートアンカー工とは?
コンクリートアンカー工とは、コンクリート構造物や地盤の補強においてアンカーと呼ばれる引っ張り材を埋め込む工法です。
地すべりが起きないように地盤を強化させたり、コンクリート構造物の固定のために用いられています。
コンクリートアンカー工の特徴
地盤やコンクリート構造物を安定させるアンカーには鋼材が使われています。
外からの圧力が、アンカーの抵抗力を超えない限り、地すべりによる地山やコンクリート構造物がズレないように保ってくれます。
アンカーの設置によって発生するコンクリートへの抵抗と、外からの圧力がほとんど同じ方向にかかるため、抵抗力を付加できるというのがコンクリートアンカー工の特徴です。
コンクリートアンカー工の用途
ここでは、コンクリートアンカー工の用途について解説します。
コンクリートアンカーは建築、土木どちらにも採用されており、非常に用途の幅が広い工法です。
施工管理や建設現場の作業において、アンカー工事とはどのようなものかを理解して、適切なタイミングで工事を実施することが大切です。
耐震補強
コンクリートアンカー工は、コンクリート構造物に耐震性を持たせるために行われます。
崖崩れや地すべりの危険がある斜面は、地震が起こってしまった場合にコンクリート構造物への影響が大きいため、耐震性を持たせる必要があります。
コンクリート構造物への耐震工事だけではなく、崖崩れや地すべりの危険性がある斜面に対してアンカー工事を実施することで耐震性が増します。
安定した岩盤や斜面と連結させたり、他の工法を併用することで地震に強い岩盤になるよう補強することが可能です。
コンクリートの補強筋
コンクリートの建物や橋梁などの構造物には鉄筋コンクリートが使われています。
コンクリート単体では強度があまりないため、コンクリートの補強筋の役割として鉄筋ではなくアンカーが用いられているケースがあります。
主に建築の基礎部分に使われることが多く、より強固な建築物にするためにアンカー工事が実施されているのです。
コンクリート構造物の固定
コンクリートアンカー工は、コンクリート構造物の固定にも使われています。
斜面の崩落や地すべりに対応するためには、コンクリート構造物を斜面に固定させなければなりません。
コンクリート構造物を安定した岩盤と直接連結させることで安定性が得られます。
岩盤に亀裂があって崩落の危険があったり、地すべりの危険がある斜面を固定して安定性を高めるために実施されています。
コンクリートアンカー工の施工手順
コンクリートアンカー工の施工手順は、次に挙げる工程で行われます。
各工程について詳しく解説します。
構造物鉄筋探査
コンクリート橋台、橋脚の本体を削孔するにあたり、コンクリート構造物の主鉄筋に傷を付けないようにするため、事前に鉄筋位置の確認を行います。
鉄筋位置の確認は設計図および現地にて行い、コンクリート構造物内部の鉄筋の深さ、位置、方向、数量をレーダー法や電磁誘導法によって非破壊で調査します。
コンクリート削孔
穴を開ける位置を罫書き(けがき)し、削孔作業を行います。
罫書きとは、罫書き針という工具を使い目印を付けることを指します。
削孔は、コンクリートを削りながら穴を開ける作業のことです。
穴を開ける時にはコンクリートドリルを使用し、ピットという金属の刃を取り付けて作業します。
削孔中に鉄筋に達してしまい、それ以上穴を開けられない場合は作業を中断し、穴を開けた部分に補修材料を充填しなければなりません。
このような場合は、穴を開ける場所を別の位置に設定し、最初からやり直すことが必要です。
孔内清掃
コンクリートの穴を開けた部分には削りカスなどが溜まっているので、ブロワーなどを使って穴の中までしっかり清掃します。
この作業は非常に重要な工程であり、しっかり清掃していないと後に設置するアンカーを引き抜く強度が不足する恐れがあります。
穴の底に削りカスが残っていると、アンカーを打ち込んだ時に底に溜まった削りカスがクッションのように作用し、拡張部分が十分に広がらずアンカーが固定しにくくなるからです。
アンカー棒挿入
穴を開けた箇所にアンカーを挿入し、芯棒が本体の頂部に接するまでハンマーで打ち込みます。
打ち込んだ後はナットでしっかりと締め、スパナ等を用いてナットの締め付け具合を確認します。
樹脂注入
アンカー棒を挿入した箇所に樹脂を注入します。
挿入したアンカーを固定させ、一体化させるためにエポキシ樹脂などを注入します。
この方法は、アンカーを取り付ける精度が高く、削孔する口径も小さくて済みます。
さらに、埋め込みの深さはアンカー径の10倍から20倍で十分な深さになります。
工期が短縮でき、工事費用を安く抑えられることがメリットです。
樹脂を注入し、硬化したことを確認できたら注入パイプを撤去して完了です。
施工上の注意点
コンクリートアンカー工の施工にあたり、いくつか注意点を挙げていきます。
鉄筋探査時の注意点
鉄筋探査時は、間違って鉄筋を切断しないようにすることが大前提です。
現在の探査法は、コンクリートを破壊せずに行うことができますが、測定環境、測定条件および使用方法を謝ると、測定結果の正確性が得られない場合があります。
また、鉄筋間隔が狭かったり、コンクリート表面から鉄筋までの距離が深いと測定できないこともあるので設計図などで確認しておくことも重要です。
削孔長の確認
削孔長とは削孔した長さのことです。
削孔長を確認しておかないと、挿入するアンカーが最後までしっかりと入らなかったりするので、設計図に書かれている長さを事前に確認しておきましょう。
ブラケット等の製作
ブラケット等の製作には、現場のアンカーボルトの位置を確認し、その型取りをしたものを反映します。
ブラケットとは、土留工事で土の圧力がかかることで地盤を壊さないように支える部材で、土留杭に溶接して取り付ける金具のことを指します。
おわりに
近年では、橋台や橋脚の縁の幅を拡幅したり、地震の際に橋桁がずれたり落下しないように変位制限装置というものが設置されており、既存のコンクリート構造物に新しいコンクリートを接合する工事事例が増えています。
従来では金属製のアンカーによって連結したり接合してきましたが、より強固で施工しやすい材質に成り替わりつつあります。
しかし、地すべりなど斜面の崩落が危険視されている場所では、コンクリートアンカーの実績が物を言います。
今後もさらなる改良を加えてより強い岩盤を作っていくことが期待されています。