橋梁補修の塗装とは?

橋梁とは、川、渓谷、海などを渡るためにかけられている構造物の総称です。

私たちが住んでいるエリアにもいくつかの橋がかかっており、川や海の横断で使用されています。

京都では渡月橋、東京では東京ゲートブリッジと橋梁そのものが観光地として発展している箇所もあります。

橋梁の歴史は古く、日本では奈良時代の初期に橋がかけられた記録が残っており、遣唐使が橋梁の技術を学び、持ち帰ったことから普及したとされています。

現在、国内における橋梁の

約4割が建設から50年以上経過しており老朽化が進んでいます。老朽化の進んだ橋梁に

は補修工事が必要です。

このコラムでは補修工事の中でも行われる回数が多い、塗装による補修に焦点を当てていきます。

橋梁補修について

橋梁の劣化には様々な原因があります。

そのため橋梁補修と言っても、原因にあわせた適切な工法が必要です。

例えばコンクリートのひび割れによる劣化の場合は、材料を注入し隙間を埋める補修を、腐食した鋼橋には

炭素繊維シートを使用した補修を行います。

その中でも行われる回数が多いのは塗装による補修です。

橋梁塗装の劣化と塗装種類

橋梁塗装の理解を深めていただくために、まずは橋梁塗装の劣化の特徴と塗装種類について解説いたします。

橋梁塗装の劣化

橋梁の塗装には

外観を整える目的だけでなく、腐食を防ぐ防食効果の目的があります。

しかし塗装面は、水、空気、日射等の影響により表面から消耗してしまいます。

塗装面の消耗により塗膜の機能が低下し、塗装の剥がれや光沢の低下、塗装の割れが発生してしまいます。

塗膜の機能が低下した状態で放置していると、やがて金属部分の腐食に繋がるため、塗装の塗り替えが必要となります。

塗装種類について

橋梁塗装の塗り替えで使用される塗料は、耐久性の優れた重防食塗装です。

「鋼道路橋塗装・防食便覧」が発行された2005年を境に、原則として一般塗装系から重防食塗装系に切り替えられました。

重防食塗装は上塗りの耐候性が高く、下塗りの犠牲防食作用によって損傷が広がらないことに加え、部分塗装が可能になっています。

現在は損傷部分のタッチアップ(1部分の塗装)で補修することが橋梁全体の耐久性向上につながると定義されています。

塗装の塗替え方式には、全塗替え塗装と部分塗替え塗装があります。

全塗替え塗装

全塗替え塗装は、

橋全体または一部区間の劣化が著しい場合にその範囲を塗り替えることを指します。

塗替え塗装の作業範囲が一定規模以上の範囲に達したときに対象となります。

塗膜の劣化は部分的に起こることが多いですが、足場や塗装効率の膨大なコストによる経済的観点で全面的に塗り替えることがあります。

部分塗替え塗装

部分塗替え塗装は、

橋全体の一部分の部材、または構造の主要部である連結部、下フランジの下面等の部位、添接板の小規模部材など、限定された部分の塗装を指します。

部分塗装を施すことにより、全塗替え塗装の時期を延長することができるため、最低限のコストで維持管理が行えるのが特徴です。

劣化が著しい部位として桁端部、連結部、下フランジ下面が挙げられます。

全ての部位が規定の期間、塗膜を維持できるわけではないので、劣化が激しい部分に関しては部分塗り替えにより対応しています。

全面塗替えと部分塗替えの選択は維持管理費用の算出など、経済的な比較をした上で、景観や美観を鑑みて決定されます。

橋梁塗装の施工上の注意点と施工手順

続いて、橋梁塗装を施工する際の注意点と、施工手順について解説していきます。

施工上の注意点

施工上の注意点は以下の3点になります。

 1.気象状況

橋梁塗装を施工する際は、気温、湿度、温度、降雨、降雪等の気象状況に応じて適切な対応が必要になります。

外壁塗装に適した天候は晴れです。

曇っていても雨が降っていない状況ならば問題なく作業ができますが、乾燥していないうちに雨が降った場合は塗料が流れ落ちてしまうので工事は不可能です。

 

橋梁塗装は高所作業が多く雨による危険性が高まるので、業者としても施工を断念せざるを得ない状況になります。

また、強風の場合、風による影響でホコリや塵が乾燥していない塗膜に引っ付くので、仕上がりが悪くなってしまうリスクもあります。

橋梁塗装は

気候の影響が多くなるため、余裕のある日程で適切な環境下のもと施行するのが望ましいです。

 

 2.素地調整を必ず行う

橋梁塗装では、

素地調整が重要です。

塗装を行う下地処理(ケレン)として、剥がれてきている塗膜や錆の除去、帆油面に細かな傷をつけておく目荒しがあります。

素地処理は軽視されがちな工程になりますが、しっかり行うほど下地の精度の高さが実現できます。

防錆効果を失っている死膜や錆を除去し、さらに表面に傷をつけることにより付着力確保ができるため活膜を取り残すことができます。

下地処理が終わり次第、すぐに下塗りを行います。

3.中塗りを必ず行う

橋梁塗装では、

中塗りを省いてはいけません。

塗料をむらなく塗るためには重ね塗りが原則です。

中塗りを省いてしまうと塗りむらが発生するため、必ず中塗りをしていきましょう。

中塗りまでの工程がしっかりとできていれば、上塗り完了時点でむらなく綺麗に仕上がります。

中塗りの注意点としては、使用する塗料と中塗り終了後の乾燥時間についてです。

中塗りと上塗りの塗料は、統一したものを使いましょう。

中塗り終了後の乾燥時間は、基本的には3〜4時間で湿度、気温、風の具合によって左右されます。

塗装が終わった直後は剥がれや膨れを確認できませんが、2〜3年経った後に起こるケースが多いです。

塗料メーカーによっても乾燥時間は異なりますが、時間を守らず塗装してしまうことで膨れや剥がれの原因になるので注意しましょう。

施工手順

橋梁の塗装作業の一連の流れについて見ていきましょう。

【事前調査】

まず初めに塗膜調査が行われ、腐食発生頻度及び塗膜の健全性を調査します。

調査終了後、塗替え塗装設計をした上で施工に移ります。

【足場・防護設置】

構造物の構造に適した足場工事を行なっていきます。

適切な設計をもとに、塗装工事部分の周りに足場を組み立てていきます。

【素地補修】

塗膜劣化部分の処理を的確に処理して施工管理していきます。

前述の塗装を綺麗に行うための素地調整を完璧にしておきます。

【塗装】

全塗替え塗装、または部分塗替え塗装の範囲を塗っていきます。

塗り終えた時点で塗装された塗膜状態を確認して、不具合があれば再度調整施工をしていきます。

検査も終わり問題がないことを確認でき次第、足場の撤去作業に移ります。

【足場撤去】

足場を解体して解体作業を行なった際の損傷確認を入念に行います。

【竣工検査】

設計通りに施行ができているのか確認して、検査が終わり次第、橋梁補修塗装工事が終了となります。

まとめ

今回は、橋梁補修での塗装塗り替えによる補修工法について解説いたしました。

橋梁補修の中でも、比較的簡単に行える塗装の塗り替えは、こまめに行うことでより橋梁が長持ちします。

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